シミ治療part3 -老人性色素斑の治療
メラニンの研究を専門とする豊福先生による連載コラム。メラニン色素や美白に関する話題を取り上げ、豊福先生が分かりやすく解説してくれます。
老人性色素斑(日光黒子)
今回のコラムは、シミの話の3話目です。
シミは見た目の年齢を増やします。40歳以降もっともよく見られるシミは老人性色素斑です。老人性ということばは響きが悪く、実際このシミは30歳 くらいからでも出ててくるので「老人性」という言葉は不適切だとも思います。今日はこのシミがなぜできるかとその治療についてです。

老人性色素斑は早ければ30歳台で、多くは40歳以降に顔面・手背・前腕など日光(紫外線)にあたるところに出る濃い褐色の境界明瞭なシミです。
紫外線に長期間暴露されたことにより、皮膚の表皮細胞が光老化することが原因です。
下の図は日焼けのメカニズムです。紫外線は表皮細胞の核とその中のDNAに傷をつけます。
これが引き金になり、表皮細胞は周囲の色素細胞(メラニン細胞)を刺激して、メラニンを産生させ、そのメラニンを周囲の表皮細胞が受け取ります。
これを細胞の核を保護するように配置します(これを核を紫外線から守る傘のような形に配置することから「メラニンキャップ」と呼びます)。このメラニンキャップにより、表皮細胞はさらなる紫外線から大事な核を守ります。

しかし、長年にわたり皮膚が紫外線にさらされると、徐々に核は老化していきます。傷ついたDNAがきちんと修復されずに蓄積され表皮細胞が異常細胞と変わっていくのです。
異常表皮細胞は、周囲の色素細胞にいろいろはシグナルを送り、過剰なメラニンを作らせます。
このメラニンが周囲の表皮細胞に受け渡されシミの濃い褐色調が作られるのです。
また、紫外線は色素細胞にも直接働き、過剰なメラニンを産生させます。これらの表皮細胞と色素細胞の正常な関係が壊れることがシミの原因となるのです。

このように、老人性色素斑は紫外線による細胞の老化が原因であることより、若い頃から野外でのスポーツ・仕事をしていた方、紫外線の防御力の少ない色白の方に出現しやすいのが特徴です、最近では日焼けサロンに行かれていた若い方に20歳後半で出ることがあります。
長い時間かかって紫外線老化は蓄積してゆきます。
今のシミは5~20年前に紫外線に当たった影響がでているわけです。

治療

老人性色素斑の原因は、過剰な色素を作る色素細胞と老化した異常表皮細胞です。シミを取り去る根本的な治療は、色素細胞に過剰なメラニン産生の指令を与えている異常表皮細胞を破壊し、正常で健康な表皮細胞に置き換えることです。
以前はドライアイスや液体窒素で冷凍して治療していましたが、治療部が瘢痕になったり、より強い色素沈着症が出現したりしていました。現在ではQスイッチ・アレキサンドライトレーザーが最も効果的な治療方法となります。
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーは1億分の1秒というきわめて短い時間で強力なエネルギーを発生するために、正常な表皮細胞や色素細胞、真 皮、血管、脂肪組織、神経に影響を与えずに、異常細胞を選択的に熱破壊します。レーザーで破壊された部分には、正常な細胞が再生してきてシミのない正常な 皮膚が出来上がります。
治療例
下の写真は、当院でレーザー治療を行った30歳半ば女性の治療経過です。レーザー照射と美白剤での治療を行い、3ヶ月でシミは消失しました。

しかし、レーザー治療を行って、老人性色素斑が魔法のようにすぐに消えてなくなることは稀です。レーザー照射によりシミの部分は熱変性し、かさぶた になります。この かさぶたの下に健常な皮膚が再生します。皮膚が再生するまでの10日程度はテープで保護する必要があります。かさぶたが脱落し、いったんは正常皮膚が出て きますが、その後は50%程度の方0で炎症後の色素沈着症が出てきます。これは照射後2~3週目から徐々に出現します。そして照射後1~2ヶ月をピークと して、3~6ヶ月程度で消失します。

炎症後色素沈着を最小限に抑えるために、かさぶたが脱落したら、ハイドロキノン(HQ)やビタミンC外用剤などの美白剤を塗ります。これらの美白外 用剤を使用しても色素沈着症が強い場合は、レチノイン酸(RA)の外用を加えたり、レーザーを再照射することもあります。このような過程を経て、シミのな いきれいな肌が再生します。


















