シミ治療part1 -ビタミンAとハイドロキノン
メラニンの研究を専門とする豊福先生による連載コラム。メラニン色素や美白に関する話題を取り上げ、豊福先生が分かりやすく解説してくれます。
朝夕はだいぶ涼しくなり、秋の気配を感じる今日この頃です。
今の時期は、夏の紫外線によるシミに悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか? そこで今回から数回に分けて美白コラムではシミのお話をしようと思います。今回はビタミンAとシミのお話です。
北米ではメジャーだったビタミンAの外用
最近はアンチエイジングや代替医療として、ビタミンによる治療や健康維持法が普及してきていますが、私が学生のころは、今のようにビタミン剤を使用するこ とは一般的ではなく、ごく一部のマニアック(?)な先生が治療に使用している程度でした。当時、ビタミンはもっぱら飲むもので、皮膚に外用することに関し てはほとんど知られませんでした。皮膚疾患に関してはとしてビタミンA誘導体の試験が行われていましたが、ニキビやシミなどに使われていたのは記憶にあり ません。

私がビタミンAの外用を始めて経験したのは、13年前のカナダです。
カナダでは、ニキビの女性にビタミンAの外用がよく行われていました。当時、日本にはまだそのような治療がなく、皮膚科の研修医に尋ねると、「日本では使っていないの?北米ではメジャーな薬だよ!」と言われ、知らなかったことにやや恥ずかしい思いをしたものです。
米国では、1960年ころからビタミンAがニキビの治療薬として使われているそうです。現在では、このビタミンAの外用は日本でもよく使われるようになってきました。
馬の毛並みからビタミンAの肌への効果が研究された?
ビタミンA(別名:レチノール)は、最初、視覚を正常に保ち、眼の病気を予防する働きがあるビタミンとして発見されました。ビタミンAの別名レチノールはレチナ(retina:眼の網膜)からきた言葉です。
ビタミンAはほかに皮膚や粘膜のうるおいを保ち、新陳代謝を促す働きがあり、ウナギやレバーなどに豊富に含まれます。ビタミンAは大量に摂り過ぎると、頭 痛・吐き気、脱毛、皮膚剥離、乾燥、無気力などの過剰症を引き起こします。そのため、サプリメントなどで摂る場合には注意が必要です。
ビタミンAを摂取するには、必要に応じて体内でビタミンAに変換されるβ-カロチンの状態でとるのが理想的です。ビタミンAと異なり、β-カロチンは過常 に摂取しても過剰症の心配はありません。β-カロチンは主にモロヘイヤやほうれん草やなどの緑黄色野菜、人参・カボチャ・トマトなどの橙赤や黄色の野菜や 果物に含まれます。

ところで、昔から馬にβカロチンが豊富な人参を食べさせると、毛並みが良くなることが知られていました。これがビタミンAの皮膚への作用であったことは、のちに研究によってわかったことです。いまではビタミンAの皮膚への作用はよく研究されています。
ビタミンAの皮膚への作用
ビ タミンAは表皮では、角質剥離、ケラチン増殖、ターンオーバー促進、ヒアルロン酸などの保湿成分の沈着を促します。また真皮では、血管新生、コラーゲンの 生産促進、皮脂腺の機能を抑制する作用があります。そのため、くすみ、にきび、小じわ、色素沈着(シミ)などに効果があります。
ビ タミンAが不足すると、表皮では基底層(新しい細胞がつくられるところ)での細胞分裂が進まないために皮膚のターンオーバー(肌の生まれ変わり)あるいは 新陳代謝が遅くなります。細胞内のDNAもその影響を受け、紫外線などで損傷を受けたDNAがあっても、回復が遅くなったり不完全になったりします。また 真皮では、皮膚の弾力や張りを保つ健全なコラーゲンやエラスチンが減少するために皮膚はたるみ、弾力を失います。さらに皮膚の血流も滅って血色が悪くな り、青白くなったり土色になったりします。
ビタミンAのアンチエイジング効果
皮膚のターンオーバー・新陳代謝の低下、皮膚のたるみ、弾力の消失、血色不良? どこかで聞いたような言葉です。そうです。これは、皮膚の老化そのものです。皮膚のビタミンA不足は皮膚の老化あるいはまったく同じ状態を引き起こしているのです。
ということは、ビタミンAを皮膚に補給することは、老化防止になるわけです。
では最もよい方法は? それはビタミンAを皮膚の上に直接塗って浸透させることです。外用によるビタミンAの皮膚の表皮と真皮での老化防止効果をまとめると以下のようになります。
皮膚の荒れ、シミ、乾燥などに関係する表皮においては
- (1) 表皮の細胞の成長と分裂が促進され、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)あるいは新陳代謝が早くなります。シミやくすみ、ニキビの改善にもつながります。
- (2) 老化による皮膚は表皮が薄くなりますが、ビタミンAは表皮細胞の成長を早め、細胞の数を増加させるので、表皮をより厚く丈夫にします。
- (3) 表皮角化細胞間にヒアルロン酸などの沈着を促し、水分の保持能を高め、皮膚のみずみずしさを回復します。
- (4) 紫外線によって発生した活性酸素を中和して、表皮基底細胞の細胞膜やDNAの変性を防ぎます。また、活性酸素によって傷付けられていた細胞膜やDNAの修復も助けます。
皮膚の張りや弾力性、しわに関係する真皮では
- (1) 真皮でコラーゲンをつくる線維芽細胞のDNAの傷の修復を助けます。その結果コラーゲンはより良質のものがより多量に生成され、皮膚の張りや弾力が回復します。
- (2) 真皮中の血管新生を誘導して血流が増えるため皮膚の血色がよくなります。
- (3) 皮脂腺からの皮脂の分泌量を減少させ、ニキビを改善します。
ビタミンAによるシミ治療とは?
ビタミンAは美白剤であるハイドロキノンをともに使用することで、シミ、とくに肝斑に対して非常に高い治療効果があります。
肝斑は左右対称性にできる、境界が比較的はっきりしたシミです。30歳台~40歳台に多く見られます。肝斑は女性ホルモンの分泌と深い関係があるといわれいます。妊娠をきっかけにできたり、経口避妊薬で出来る場合もありますが、5割は紫外線が関係しています。
肝 斑がよくできる場所は、紫外線が多くあたる前額、頬骨部、上口唇、下顎です。左右対側性に境界のはっきりした褐色のシミを生じ、目の周囲が抜けるのが特徴 です。困ったことに、肝斑はほかのシミと違いレーザー治療が効きません。それどころか、レーザーを使用するとシミが濃くなるということが起こります。そこ で、ビタミンAとハイドロキノンを治療に使うわけです。ハイドロキノンは効果の高い美白剤ですが、単独で用いても肝斑には効果が出ないことがよくありま す。このハイドロキノンとビタミンAを組み合わせることで非常に高い治療効果が発揮できます。
※ハイドロキノンは、化粧品に多 く用いられる美白成分である、アルブチン、ビタミンC誘導体、コウジ酸などの100倍の美白効果があると言われている成分です。刺激が強いことから化粧品 への配合は禁止されていましたが、2000年の規制緩和により化粧品にも配合されるようになりました。通常化粧品に配合されているのは1~2%で、皮膚科 で処方されるものは5~10%になります。
シミ治療の流れ:漂白と治癒
ビタミンA&ハイドロキノン療法は、1)漂白期と2)治癒期に分かれます。
漂白期
治療開始4~6週目ではトレチノインおよびハイドロキノンクリームを併用し、表皮メラニンの排出を促します。多くの場合は治療開始後2~3日のうちに皮膚が紅くなる皮膚炎症状と、ターンオーバーの促進により皮膚の皮がうすく向ける状態がみられます。
治癒期
シミが消失あるいは軽減した段階で治癒段階に移行させます。ビタミンAのみを中止しハイドロキノンのみを広範囲に外用します。

こ のように、ビタミンAとハイドロキノンはレーザーが無効なシミを効果的に治療することができます。しかし、この治療にも少なからず弱点があります。ビタミ ンA(トレチノイン)は光や熱による安定性が悪く、冷蔵庫あるいは冷凍後に保存しなければなりません。また。「レチノイド皮膚炎」といって、外用した部位 が赤くなり皮膚がポロポロむける皮膚炎は避けることができません。逆に、このようは反応がないと効果も期待できません。 このほかに、トレチノインには内服において動物実験で催奇形性の報告があります。ただし、外用剤では吸収され血中に入る量が非常に微量であるため、催奇形 性は非常に低いと考えられます。実際、米国のFDA(米国食品医薬品局)の認可のもと、北米では、トレチノインが若い男女のニキビにもっとも効果がある薬 として繁用されています。 しかし、皮膚科医の間では妊娠可能な女性にはトレチノイン使用中は、万が一胎児に影響を与えることのないよう避妊を指導しています。
シミの種類によって対処法が違います
エ ステサロンなどの宣伝の影響か、シミ=レーザーで消える、と思っている方も多いかと思いますが、肝斑などシミの種類によっては悪化させてしまう場合もあり ます。あなたのシミがどのタイプかは、専門医でないと見分けにくい場合もありますので、なるべく皮膚科医など専門家に相談しましょう。
皮膚炎や皮膚がむけるなどの症状を伴わずにシミを解消したい、という方は美白用の化粧品を使ってみるのもいいでしょう。即効性はありませんが、使い続けているうちに効果が出る場合もあるかと思います。また、でき始めのシミにも手軽に試せるこれらの化粧品はおすすめです。














