皮膚の健康とメラニンの関係
メラニンの研究を専門とする豊福先生による連載コラム。メラニン色素や美白に関する話題を取り上げ、豊福先生が分かりやすく解説してくれます。
肌の色を決めるだけではない、メラニンの働き
肌の色を決めるだけではない、メラニンの働き
私たちは、“黒人”、“白人”、“黄色人”というように、肌の色で人種を分けることがあります。もっとも、それぞれの人種はさらに細かく分類することができるため、専門家がこの3つだけで人類を分類することはほとんどありません。
メラニンが肌の色の決定に深く関わってくることは美白コラムVol.1「肌の色はどのようにして分かれたのか」でも述べましたが、メラニンには皮膚の色を左右するほかにも皮膚の温度制御、抗菌、毒性薬剤や化学物質の吸収、胎生期の神経発達、フリーラジカル、活性酸素の吸収など、実にさまざまな作用があります。
メラニンの最も重要な働きとは?
中でも最も重要なメラニンの作用は、皮膚の表皮細胞を紫外線から守ること。メラニンは、紫外線からケラチノサイト(表皮細胞)のDNAを守るために、帽子のような役割を担うのです(下図)。

このメラニンの帽子がないと、紫外線によって核の細胞の遺伝子は変異してしまい、皮膚癌を引き起こします。
また、紫外線と皮膚癌の関係を調べると、皮膚の色が濃いほど癌になりにくいことが分かります。これは、紫外線を防ぐというメラニンの作用がうまく機能しているためです。このことからも、メラニンが皮膚の健康を保つとても重要な役割を担っていることが分かります。
フィッツパトリックのスキンタイプ分類
米国ハーバード大学に、ヒトの皮膚の色を分類したフィッツパトリック(Fitzpatrick)という教授がいます。この先生は皮膚科ではいろいろ な分野で有名な先生で、私の九州大学時代の恩師、故堀嘉昭教授の師匠にあたります。このことは、私がメラニンを研究するキッカケになりました。
フィッツパトリック先生は皮膚色のタイプを、1)見かけの皮膚の色 2)sunburn;サンバーン(日に焼けたときに紅くなる反応)3)suntan;サンタン(日焼け後にしばらくして黒くなる反応)に分類しました(下図)。

【図】フィッツパトリックのスキンタイプ分類
太陽の光にさらされた後、赤くなりやすいが黒くなりにくいタイプをI型(サンバーン有,サンタン無)、逆に赤くならず黒くなる場合をVI型(サンバーン無,サンタン有)など、皮膚の色と反応に応じてI~VI型のスキンタイプを提唱したのです。
日本人のスキンタイプはII型、III型
日本人のスキンタイプはだいたいII、III型です。しかし、九州南部や沖縄の人には、IV型もいると考えられています。
また、日本人はJ-I~J-IIIの3タイプに分類できます。J- I は赤くなりやすいがサンタンは極めて軽く、J- IIIは逆にサンバーンは軽いがサンタンが強いタイプです。九州南部や沖縄には、サンバーンが起こらない人もいます。このタイプの人をJ- IIIに分類しないのであれば別枠(例えばJ- IV)を作るべきだと思います。しかし、ほとんどの日本人はJ-I~J- IIIに分類されます。

【図】日本人のスキンタイプ分類
ユーメラニンとフェオメラニン
メラニンには2種類あります。1つはユーメラニンと呼ばれる褐色~黒色のメラニン。もうひとつは黄色~赤色のフェオメラニンです。髪の場合、ブロン ド(金髪)は黄色のフェオメラニン、赤毛は赤色のフェオメラニンにユーメラニンが混ざったものです。黒髪はほとんどがユーメラニンとなります。髪の毛も肌 の色も、ユーメラニンとフェオメラニンの比で決まります。

メラニンの種類と癌の関係
ところで、「赤毛のアン」にも出てくる「赤毛」ですが、アイルランド人には赤毛の人が大勢いることが知られています。ハリウッド女優のニコール・キッドマンはアイルランド系オーストラリア人ですが、彼女もやはり赤毛です。
赤毛は遺伝子(メラノコルチン1受容体)が変異したものですが恐らく、アイルランド島という、ある程度隔離された環境で繰り返された結婚によって広まったと思われます。 また、赤毛の人には紫外線による皮膚癌を発症する人が多いことも知られています。遺伝子の変異とともに、赤のフェオメラニンが発癌に関係しているのではないかと考えられています。
赤毛の人はなぜ皮膚癌になりやすいのか
ここで簡単に活性酸素の話をします。下図に示すように、活性酸素とフリーラジカルの両方を活性酸素とすることが多いので、ここでは2つをあわせて“活性酸素”と呼びます。

活性酸素は我々のからだの中で作られます。そしてそのつど、抗酸化物質により無害なものに変えられます。しかし、タバコや紫外線、排気ガス、ストレ スなどで活性酸素が通常より多く作られると、からだは活性酸素を処理しきれなくなります。結果、無害化されなかった活性酸素が細胞の脂質やDNAを傷つ け、癌などたくさんの病気を引き起こすと考えられています。

褐色~黒色のユーメラニンは紫外線により発生する活性酸素を消去します。しかし、フェオメラニンは紫外線を浴びると酸素消費が進み、逆に活性酸素を 作ってしまいます。赤毛の人は、遺伝子異常に加え、フェオメラニンが活性酸素を発生させるので、紫外線による皮膚癌の発生が多いと考えられているのです。
色が白いと老化も早い?
私は子供のころ、白人=金髪と思っていました(九州の田舎にいたのでしかたありませんが)。しかし、カナダに留学したとき、そうではないことを知り ました。生まれながらの金髪は非常に少なく、カナダの女性も金髪に憧れていたのが印象的でした。金髪と褐色が混じった、「ダーティーブロンド」(私のカナ ダの友人は自らの髪をそう呼んでいました)が普通で、それをブロンドに染めるのです。
うらやましがられる金髪の女性ですが、紫外線を防御するユーメラニンが少ないため、肌の老化は早いようです。特に、スウェーデンなど北欧やオーストラリア、米国に移住した人々の子孫は、紫外線による肌ダメージが大きいですね。 それに比べると、日本人の肌は年をとってもきれいです。白人の30歳が日本人の40歳代後半から50歳くらいではないでしょうか?














