紫外線を正しく理解しよう!
メラニンの研究を専門とする豊福先生による連載コラム。メラニン色素や美白に関する話題を取り上げ、豊福先生が分かりやすく解説してくれます。
日焼け大会、小麦色の肌、は過去の話・・・
私 が子供の頃は、小学校では夏休みが終わると「くろんぼコンテスト」または「日焼け大会」(いまでは“くろんぼ”は差別用語ですが)といって、最も日焼けし た子供が、元気な証と表彰されていました。また、これが、日本各地で開催されていました。そして、大学生の頃はこんがり日焼けした「小麦色の肌」が、健康 美としてもてはやされていました。
しかし、現在では日焼け大会は、日本皮膚科学会からの通達で中止になり、一部の人を除いて「小麦色の肌」もよいとは思われなくなりました。それは、紫外線が、皮膚の老化を促進し、皮膚癌の原因となることわかったからです。
今回は、シミや皮膚の老化の原因となる紫外線のお話です。
紫外線の有益性
太陽光線で植物は光合成を行い生育し、それを我々は食事として採っています。また、太陽光線は地球には熱と光をもたらします。しかし、その太陽光線には紫外線が含まれています。
太陽光線は波長の長いものから赤外線、可視光線、紫外線に分けることができます。
紫外線は可視光線の紫の外側にあることより、紫外線と名づけられました。紫外線は生物的な作用の違いから、さらにA紫外線(UV-A※1)(320~400nm※2)、B紫外線(UV-B)(290~320nm)、C紫外線(UV-C)(<290nm)に分けられます。
この中で、C紫外線は生物にとってきわめて有害ですが、さいわいに成層圏のオゾン層に吸収されるため、地球には届きません。我々が住んでいる地表に届く紫外線はUV-Bの一部とUV-Aです(図1)。 紫外線は、生物にとって、生存をおびやかす脅威である一方、不可欠でもあります。
※1「UV-A」=「Ultra Violet」(紫外線の略)。UV-Aは紫外線A波、UV-Bは紫外線B波を表します。
※2「nm」=ナノメートル。10億分の1メートルを指します。波長を表す単位として使われています。
紫外線は皮膚でビタミンDの合成を助けます。
このビタミンDは、腸管からのカルシウム吸収を促進するだけでなく、破骨細胞、骨芽細胞を活性化させて、骨の形成を促進します。

前月のエッセイに書いたように、紫外線をよく反射する黒人は、日光照射量が少ない低緯度では、骨を形成するに十分なビタミンDを合成することができずに、長い期間かけて、肌色が薄い変異種が生存に有利にはたらき、白人になっていったと考えられます。 このように紫外線は人類にとって大変有意義なものなのです。では、日焼け大会を中止させた紫外線の有害な面とはいかなるものでしょうか?
紫外線の有害性
UV-B(紫外線B波)は日焼け後の色素沈着を起こすほか、表皮の基底細胞に働き、皮膚癌の発生に関与しています。一方、UV-A(紫外線A波)は表皮を突き抜け、真皮の深部に到達するため、皮膚にハリを与える線維成分を変性させ、シワやたるみの原因をつくります。

下図は年齢により真皮のコラーゲン線維の様子です。赤で囲んだ部分はコラーゲンを表し、年齢とともに、コラーゲンが変性していくのがわかります。変性したコラーゲンはもはや皮膚の弾力を保てなくなり、皮膚のたるみ、シワ、毛穴の開きの原因となります。

日焼けサロンでの日焼けは老化を促進させる!?
私のクリニックでは、近所に総合大学があり、そこの学生さんもよく診察にいらっしゃいます。
なかには、まだ3月なのに、皮膚が小麦色の男性女性がいらっしゃる。聞けば、「黒い肌のほうがカッコいい」、「体が痩せて見える」そうです。
しかし、日焼け願望は日本人だけではありません。本来紫外線を防御するメラニンが少ない白人もよく日光浴をします。日光浴の源は、低緯度地域の白人が紫外 線のはたらきで、ビタミンDをつくることにあります。しかし、現在では食事によるビタミンDの摂取プラス日常生活での日光への曝露で、十分なビタミンDを 得ることができます。
私がカナダに留学していたころ、皮膚科にポーランド系カナダ人の女子医学生がサマージョブに来ていました。ある夏の日に、真っ黒に日焼けして病院へ来たの で、どうしたのか聞いてみると、2日間にわたり湖で日光浴をしたといいます。彼女は医学生で紫外線の知識が十分にあるのに、なぜだろうと思ってきいたとこ ろ、日焼けした肌は、「お金持ち」に見えるのだそうだそうです。日焼け→サマーバカンスができる→お金持ちという発想らしいのです。

日本では、日焼けサロンで手軽に効率よく日焼けするようです。日焼けサロンでの機械が発生する紫外線はほとんどがUV-Aであり、発癌性はほとんど ありません。しかし、UV-Aは皮膚の老化を促進させます。紫外線の老化は数年から十数年後に現れます。日焼けサロンでの日焼けは考えものです。
正しい紫外線対策とは?
このように、現在では紫外線は有益性よりも有害性の方が大きな問題となっているようです。皮膚癌、皮膚の老化、シミを防ぐには以下のような方法がよいと思います。
(1) 白い肌はメラニンが少なく、したがって、紫外線から皮膚を守るには不利です。皮膚の老化、発癌の原因となる急性の日焼けを防ぐには,いきなり白い肌に長時 間強い紫外線を浴びるのではなく.少しずつ紫外線に当たることが重要です。これにより、白い皮膚でもメラニンが徐々に産生され、そのメラニンは紫外線から 皮膚を守る「傘」の働きをするからです。
(2) 紫外線の強い朝10時~昼2時までの長時間の戸外活動ではサンスクリーン(紫外線止め)を使用しましょう。曇りの日でも紫外線は晴れの日の60-80%も 地表に降り注ぎます。曇りだからといって油断せずに紫外線防御に中止しましょう。また、紫外線防御はサンスクリーンのみで対応するのではなく、衣類、帽 子、サングラス,傘などによる総合的防御を心掛けましょう。
(3) サンスクリーンの使い方 サンスクリーンはSPF(sun protection factor)がUV-Bにより発生する紅斑の抑制効果の基準となります。日常生活での外出時ではSPFは15程度、短期間の野外活動、夏季の散歩では SPFは20-30程度、海水浴,スキー,ゴルフなど屋外スポーツで強い紫外線に長時間ごらされる場合はSPF50程度としましょう。
















